別れの曲/
黒木アン
再会という
残酷な喜びを
与えられた大人は
菜の花に囲まれた
少女になりたいと願う
胸の絡まりと
夢しかなかった
沈丁花の薫り漂う
あの頃からの染みを
どうして
抜き清めることなど
できようか
ワタシはこれから
どれくらいの嘘を
ついていくのだろう
初恋が
最後の恋になる日
貞操な憧れが
貞淑な愛となり
交わせない愛を
ひとつ見送る
春うらら
嘘が華やかに
散っていく
ワタシは時折
ひとの欲深さに
この目を
潰したくなるのです
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