黒艶姫/クロヱ
。腕を広げて嘶いた。(いなないた)
そうだ。この女には こいつらには翼は無いのだ。この俺のような。
そこから先は俺たちの領域だろう。お前が侵していい場所ではない。
だのに何故 空を飛ぼうとするのか。全くもって理解ができない。
「あなたには分からないわ
そんなあなたの全てが、わたしは羨ましい」
女は海にそんなことを言い放って、飛ぼうとし落ちていった。
それから先は覚えていない。
咄嗟について行き 掴もうと羽ばたいても俺では女を持てる訳もなく 羽が何本か散っただけだった。
何故そんなことをしたのかも思い出には残っていない。
ただひとつだけ今でも浮かぶ
逆さまになった女の綺麗なその微笑み
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