ラズベリー/opus
足跡
波に誘われて
靴が漂う
歯から空気が漏れる
舌の上のラズベリー
ぐしゅっと潰す
あの子は
どうしようもなく
馬鹿で
頭を撫でると
まぁ、
喜んでいた
星の降る夜に
手を繋いで
二人近所の山の上
君は泣き出して
どうしたのって
顔覗きこんだら
キスして
そんなもんだよ
それでどうしろと
どうしたもんかと
薄暗いケーキ屋で
僕はチョコレートケーキを
君はベリータルトを
君は大きく口を開けて
タルトを頬張る
とても美味しそうに
ぽろっとひとつベリーが落ちて
コロコロと
それを摘まんで
風に吹かれて
君のスカートが揺れる
靴が砂に埋れ
電車にゆられながら
感じた肩の重み
シャンプーの香り
泣かないでって
だってって
ぐしょぐしょの靴を持って
そのラズベリーは
堪らなく酸っぱかったんだ
どうなるもんかと
どんなことでも
どうにかするんだ
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