「雨と緩い身体」/宇野康平
 
イヤホンをかけた男が笑いながらご苦労と
散歩していました。

塀の上に鳩避けの剣山があって、こっちに
落ちてこないかと一生懸命に顔を手で覆い
ます。

空き家の脇、コンドームを売る自販機が
錆びていて、家族計画は子供の流産で隣の
犬が吠えている。

笑いながら、極楽はどこかと、電線から
落ちる水を避けて。

おかえりと泣く。
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