晴れの日にブルース/ただのみきや
 
ない

ビリー・ホリデイがラジオで歌っている
生身は消えた 
歌声だけが響いて来る 
時代を越えたのだ

送信する文字に心は乗車できただろうか
以心伝心に対し言葉は遅速な蝸牛なのか
伝えないための言葉が時代を越えて
やがて宇宙の言語に翻訳されるだろうか
住所も宛名も
イマハムカシ 
     ミライハイウダロウカ 

――息子よ  

晴れの日にブルース
土曜日にはいつも
失くしたものの気配
分別される前の心から

仕事が始まる
     始めるのはおれだ


   
              《晴れの日にブルース:2015年4月4日》







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