話しかけることができない/草野春心
 


  きみに
  話しかけることができない
  脈をうつこめかみに手をふれて
  ひとつめの言葉をさがしているのに
  どうしても話しかけることができない
  うまれて初めての夜がきたかのようで
  咳がとまらない
  陽にそまる世界のまぶしさが嫌になるくらいかなしい
  しんじられるものはショパンの歌のほかにない
  そのような こわれやすい自分でしか
  きみに 話しかけることができない
  わたしは きみに……



戻る   Point(5)