話しかけることができない/
草野春心
きみに
話しかけることができない
脈をうつこめかみに手をふれて
ひとつめの言葉をさがしているのに
どうしても話しかけることができない
うまれて初めての夜がきたかのようで
咳がとまらない
陽にそまる世界のまぶしさが嫌になるくらいかなしい
しんじられるものはショパンの歌のほかにない
そのような こわれやすい自分でしか
きみに 話しかけることができない
わたしは きみに……
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