光鉄指/木立 悟
足もとの道は
ひとつの石に揺れ動き
前方へ前方へと傾いて
歩むものを運びつづける
土の無い道をすぎ
灯の無い道をすぎ
何も無い道をすぎても
指が生まれ
点が生まれ
線が引かれる
脳と心臓とはらわたと
細胞は現われ
消えつづけ
指のかたちに残されてゆく
透明な板に
透明な盤に描かれたうたが
混じることなく
幾つも幾つも重なり廻り
道から空へ
道から空へと響いてゆく
片方の手に浮かぶ光を
もう片方の手でつつみ
白い鉄の夜をゆく
消え入りそうな笑みのたましい
小さな指をひらきゆくたましい
すぎゆく道は透きとおり
影は水の音になり
歩むものの姿を映す
両手を握るふたつのたましい
何も無い道を照らすたましい
むさぼるように群れる鴉が
朝陽を浴びて散った跡には
光と鉄の指が残され
変わるうた
変わらぬうたを描きつづけている
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