形跡。/
梓ゆい
父の声が、聞こえなくなった。
「もう、泣くのは止めなさい・・・・。」と
私を突き放したのだろう。
匂いの消えた、フリースマフラー。
折りたたんだ簡易ベット。
もうすぐ手放すファミリーワゴン。
何かを整理して
何かを捨てるのは
生きねばならぬ残酷な現実。
(私は、願う。)
早く追いかけられるよう
空を見上げながら・・・・。
(私は、願う。)
そのときは迷わぬよう
父の元へ向かえる様に。
戻る
編
削
Point
(2)