chikara。/梓ゆい
父の好きだった物を食べると
思い出す事が多すぎて
(もう二度と食べない。)と
自ら放棄した。
熱々のラーメン。
つやつや光る大皿の刺身。
カラフルなマーブルチョコレート。
一息ついでに淹れるコーヒー。
どれもこれも変わらずにあり続けているのに
それらをほおばる父が居ないだけで
私は「食べること自体、忘れさせて欲しい。」と
黙って水を飲む。
伏せたままの茶碗。
欠けてそのままの湯飲み。
父の持ち物がまた一つ
「いいから食べなさい。」と
娘に箸を握らせる。
戻る 編 削 Point(3)