キリ/サク/木屋 亞万
じ取ったときに
手を放しても
矢尻は落ち葉を叩くだけ
狩りから稲作へ
替え時は今なのかもしれない
錆びた鉄がキリキリこすれて
ハンドルを回す手に振動が伝わる
四角い氷がぐるぐる回る
ガラスのお椀に氷片を盛る
スプーンを突き刺すたびに
サクッサクッと音がする
雪山でストックを斜面に刺す時のように
涼しい音が目の前で口の中でサクサク響く
切り立った崖の上から
錯乱した男が叫びながら
海へと落ちていった
一言目を叫ぶ途中で
波に飲まれてしまったので
何を言いたかったのか知る者はいない
重力は強く一生は短い
言いたいことは端的に
それが教訓となった
戻る 編 削 Point(3)