キリ/サク/木屋 亞万
 
霧が立ち込める舗装された道
柵が道の脇をどこまでも塞いでいる
細長い檻の中を走っている気分
柵の先はどこまでも草原
草の剣先に水滴がついて
風が吹くたびにキリキリと流れ
透明の花が咲く

切り株になってしまった
桜が咲くことはない
切り刻んだ屑を固めて燃やし
煙で肉を燻した
野山を駆け回った足の肉は
腸の皮の中で桜色に染まる
切り株は死
肉塊は死
だがそこに在り続ける
死んでも簡単には消えてなくならない

キリキリと弓を引き絞りながら
歩く足元でサクサクと落ち葉が鳴るので
獲物がどんどん逃げて行ってしまう
草食動物は耳が良く身が軽い
お尻の残像を感じ取
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