純粋痴態/ただのみきや
 
痴態は演じられるものではなく
晒してしまうもの
ネズミを焼く匂い
霞の向こう兜を脱いだ少年の
老いを孕む眼差し
生を一巡りしたかのよう
遺灰を踏み しめる
空を模した青磁器/亀裂の風
ゐっこだけ
残してしまう幼い弟を抱くように
首 ゐっこだけ
盗んだものだから盗まれるのが怖い
木々を巡り追いかける玩具の声に
純粋無垢な
ゐっこの痴態 生臭い蕾
首 ゐっこだけ
捨てられない音魚 呂律の弛緩
蜜に絡む舌は内へ内へ地下茎となる
土に埋れたサイダーの壜
引き抜けば半身は失われた記憶
期待しないでいて
そう言って世界は
寂しげに目を合わせようとしなかった今も

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