14/きるぷ
 
火は
手懐けられた破壊というようすで
どことなく可愛らしく見えた

これと同じものが山や草原を焼くというのが
わたしにはうまく想像できなかった

それでも時折
ふとした瞬間に
どこか体の奥のほうの薄暗い場所から
喚び声が聞こえるような気がすることがあった

ときにはこの、
掌におさまるサイズの暴力を導きとして
モローの描いたサロメを連想することもあった

その印象は喚び声と連れ立って
わたしに何かを教えようとしているようだった

そんな感覚も
勘定を済ませて窮屈な階段を上り
雑踏のなかにまぎれてしまえば
いつもどこかに消えてしまった

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