14/きるぷ
 
東口から出て
街道沿いにしばらく歩いたところに喫茶店があった
煉瓦製の防空壕のような店だった

バータイムになると円い小さなテーブルやカウンターの上に
高価な猫みたいな目をした店員が
ひとつずつ小さなローソクを置いた

昔の音楽を聞くともなく聞きながら
ときどきそこで聞いたことがあるようなカクテルを飲んだ

一人のときもあれば二人のときもあった

二人のときは大抵静かな声でぽつぽつと
意味があるのだかないのだか
よくわからない話をするのが常だった

一人のときは大抵
ローソクの火が揺れるのを眺めていた
それくらいしかすることがなかったから

ローソクの火は
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