色覚と怠惰/初谷むい
ほんとうは、虹は七色なんかでは無く、もっともっと、
ぼくたちにわからない色をふくめているらしい。
その原理に基づくと、ぼくたちがきれいだきれいだと
ほめちぎる石鹸水も、計算された形の高いほうせきも、
ふくふくとしたきみのほっぺたの白い毛の色も、
ぜんぶ、ただしくは知れないということなのだろうな。
しれない。簡単な事実だ。
すべての言語、きみのDNA、もし知りたいとせつぼう
したところで、手に入れることはできない。せつぼうは、
ぜつぼうと似ていることにぼくは気付く。うまれ方もしに方も、
現在のぼくにはわからず、晴れている日の窓際でだって
ぼくは贅沢にぜつぼうしている。
ひがう
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