嘘/えりくさちえい
 
はやけっぱちになった。いきなり女に抱きついて、
「嘘なもんか」
でこっぱちにキスをする。途端に女はしおらしくなり、
「ありがとう。私、お受けします」
店内に拍手が沸き起こる。パチっぱち、パチっぱち。っぱちドラマ、完。

小さな中州に立って

ひとときの中州に立っている。

知り合いの宇宙人留学生の話。三年目になるが、地球の空気に慣れたと思ったのはごく最近のことらしい。
彼、初めて地球に降り立ったとき、なんか臭いなと思ったんだそうな(笑)

三人称視点で私が静止する。
物語はここで終わる、と私の声がナレーションする。
心の右下に終わりの文字が浮かぶ。

振り返ってみれば、私は実によい出会いに恵まれてきたし、出会い系妖術師だった。私はその気になれば、出会い系妖術の力で友達や恋人を好きに作ることもできた。けれども、しなかった。しなくても、いや、しなかったからこそ今の幸せがあるのだと思う。私はこれまでにただの一度も出会い系妖術を使わずにいる。
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