私/白砂一樹
 
忘れもしなかった 自分の重荷を降ろして どこか 横になれる所が欲しかった
「ない」。
一言で片付けられる私の人生
「つまんない」。
そうか、そうなのか
私が私に躓いていた時、あなたはあなたに躓いていた
もう悲しくもない 夜の虚空があるばかりで 夏の夜空も独りじゃ「つまんない」。ダッシュしてみるか?
それとも脱走か?
形而上学的瞬間がと或る電車内で起こったのだった 今も覚えている 砂塵が俺を取り巻く
やっぱり「つまんない」。
投身自殺は不完全自殺である と車掌は目撃した 目撃者は彼だったのだ 目を瞑りながら彼は言ったのだ 彼は 逝ったのだ 煙のように彼は忽然として消え入った夏の夜
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