ヘイヴン/ホロウ・シカエルボク
 

同じ言葉をありがたがり過ぎて
違う文節を認められなくなるような愚かさを美徳と呼んで
「そこにあるものはとうに終わったものだ」と
テーブルの上のものを叩き落して御覧なさい
食卓に着いたものがすぐさま
喉もとに刃物を突きつけてくるでしょう
それは安易な美徳よりもずっと確かに
確実にあるものを終わらせあるものを凍りつかせるでしょう


道の上には風に乗って
はるか遠くからやって来た詩篇のかけらがありました
目に見えるのはほんの
ひとことふたことの言葉だけで
だからこそその詩篇には
たしかな言葉の連なりとしての意味があるのでした
やがてそれも
落葉や
わたしたちやそのほかの
ぶら下がる餌に踊るものたちのいとなみによって汚れちぎれていくでしょう
それは羽虫のようにばらばらで塵のようにあっけないでしょう
わたしは道の上に立っていて
時刻は死人たちに囁くような午前一時で
腕時計は冷たい春に冷えているでしょう


冬の終わる理由を憎まないで
春の始まる理由を





あなたが
終わらない理由を








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