センチメンタル鉄道/
捨我
海沿いの無人駅
トンボが去って黄昏時
水平線の向こうから
茜色の列車がやってくる
読みかけの文庫本
栞を挟んで乗りこめば
たゆたう水面をかき分けて
列車はひねもすのたりゆく
近づく街に火が灯り
提灯連なる祭りのよう
並んだ鳥居を潜ればそこは
季節外れの桜の国
朧月に照らされて
夜桜舞い散るその様は
胸が痛むほどに奇麗
何気なく思い出してる
さりげなく涙してる
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