ひとつ ほどいて/木立 悟
中空の柱から漏れる声
器へと器へとそそがれる糸
底は在るが
見えないほど遠い器へと
手のひらから
刃も銃もこぼれ落ち
消えたはずの雪に沈みゆく
息継ぎの音をたてながら
五つの顔の番人
海のそばの岩の街
白く長い階段
すぎるものらが置いてゆく影
擦り減った場所に糸は降り
踏みしめたばかりの地を隠す
氷のなかを泳ぐ蒼
曇のはざまの指を見る
水色の糸にとらわれ
絵のなかから出られない羽
狭い夜に
響きわたる鐘
時は
時を映すものを顧みない
自ら墓穴を掘るものにも
死を知らぬものにも名前は無い
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