相馬野馬追〜その瞳をみていたら〜より/黒木アン
 



難をのちに残すなと
未来へのつとめを
語りだすのでしょうか


武士魂
意気たるを壮とする
才たけなくとも
世のありように
やわらかく
人のありように
いかされて
道柴の人に
踏まれても
露の情けで
よみがえれと
人生四季の
眺め方を教え
子のないわたしの
吉報に
宝にしなさい
もったいない
掌手の珠だと
馬になり
孫を背にのせ
笑った父さん


もしもう一度
会えるのなら
相馬野馬追に
いきませんか

あなたは馬が
好きでしたから

いつか哀歓を
のみこめましたら
父娘の馬歌を
もう一度
落ち葉を焚いて
童心になり
その明るさの中で
ほのぼのと

今はまだ
別れ悲しく
涙がでます
あまたを越えて
この別れほど
悲しいものは
ないのです

わたしは
いい娘でしたか
甲冑がこわくて
近づけなかった
蔵の思い出
今は愛しい
今はいつも風に
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