形見分け。/梓ゆい
 
洗い立てのセーターが
残っていた匂いをかき消して

近くに居るはずの存在感をまた一つ
この世からほおむり去った。

庭先で鳴く猫が
「寂しい。寂しい。」と呟いているようで
荒れた畑の片隅で
摺り寄せた身体をそっと抱き寄せる。

からの衣装ボックスが無造作に置かれ
袖を通すことの無くなったコートが
花と遺影を見つめている。

赤いベストとこれは
誰も着ないから。と
燃えるゴミの袋に入れられて
旅路を行くあなたの後を
必死に追いかけるのだろう・・・・。

沢山の物達と焼かれても
決して見失なわないように。

「今年の新盆は、刺身を食べよう。」

静かになってもいい。
あなたの好物で囲む食卓は
それだけで幸せなのだから。

泣いていても・笑っていても
生きて動くだけで
飯を求めて腹が鳴る。



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