駅前の喫茶店/葉leaf
一面のガラス張りの外では
人々が雪のように紅葉のように
はらはらと歩き去っていく
老いも若きも男も女も
それぞれの足取りとそれぞれの心持で
ただ美しい自然の移ろいのように
はらはらと無音で過ぎ去ってゆく
喫茶店の照明は柔らかく
降り積もる知性のように
人々の虚ろなまなざしに方向を与える
喫茶店の座席は機能的に配置され
その空間を決定した感性の熱が
いまだにじりじり進化を続けていそうだ
喫茶店は一つの彫刻である
壁やテーブルなどで抉られた内部の人のいる空間
その広がりが一つの彫刻なのだ
そしてその彫刻に浸されながら
人々は外に散ってゆく人々と一回限り
喫茶店という彫刻によって
同じ時間を刻む等しい時計の針として
ガラスの断面に鋭く彫刻される
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