菜虫化蝶/nonya
 
の身体は生えていた

私は羽化しようとしていたのだ

慌てて手足を動かそうとしたが
どれが手だか足だか分からない
必死に助けを呼ぼうとしたが
つぼまった口からは声が出ない
諦めたようにあたりが暗転した

次に気がついた時には
私の身体は宙に浮かんでいた
視界は白と青と赤の万華鏡
色と明暗が反転した花畑
肩甲骨のあたりが忙しなく動いて
風景がゆうらりと上下した

私は蝶になったのだ

そう思った瞬間
私の目の前には無数のガラス窓
無数のカーテンの隙間から見えるのは
ソファーの上に転がった無数の青虫
よだれ染みのついた無数の文庫本

背中が無性に痒くなって
私は目が覚めた

青虫が蛹の夢を見ていたのか
蛹が蝶の夢を見ていたのか
蝶が私の夢を見ていたのか
私は本当は青虫なのか

分からない

おそらく
夢から醒めたらまた次の夢を見る
そんな不確かな繰り返しだけが
私の一生なのだろう




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