大堀相馬焼(福島県浪江町)〜その瞳をみていたら〜より/黒木アン
打ち水をした
石畳をぬけると
居ずまいを整えた
宿の女将さんが
品よく出迎えてくれて
よくいらして下さいましたと
冷えた麦茶をさしだされ
夏陽に火照る体には
愛情注がれたような一滴まで
のどにしみる
駒の絵柄
からころと
下駄を鳴らしてそぞろ歩けば
山あいのいで湯に
至福のとき
短夏に
蚊帳の張られた部屋で
もう一杯の冷酒にほろほろと
昔日の絵葉書に筆をのせて
ご機嫌ようと末もよろしく
となりの宿では
ようきたね
外は寒かろうねと
いっぷくの
のど通るあたたかさに
情あればこそ
しんしんと積もる
雪景色は
いっそう美しくみえて
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