安波祭(福島県浪江町)〜その瞳をみていたら〜より/黒木アン
ひと目をひく
早乙女たちに
風が少しの春と
神の訪れを
知らせてくれて
おりました
群落の息の緒は
へその緒になり
ゆかしい おぼこが
踊りにひねもす
季節風
ぽっかぽっかと
陽のあたる
縁側座布団
柱時計
犬猫きくもの
みな歌にのる笠
裕福では
ありませんでしたが
損だの得だの
ぬきにして
よく働いて
きたのですよ
金銭の保障など
ありませんでしたが
自然の色香に
いだかれた
安らぎのなかで
星を仰ぎみて
月齢をよみ
誕生祝いの
母の寿司と祭りが
なによりの
楽しみでした
そう昔を
語ってくれた
ばあちゃんは
髪を結いあげ
一通りの身だしなみを
つけてくれました
そのばあちゃんの声
聞きたくても
最期すら
しらないのです
ほんわり
ほわり
あったかいが
あつまるところは
どこですか
花笠かぶり
「歌い婆さま」
田植えの踊りを…
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