術後/草野大悟2
たのかね」
倉田は、白髪を掻き上げ村中を見上げながら言った。
「その点につきましては、術前カンファレンスで申し上げましたとおり、過去の術例や論文で当然熟知していました」
「そうかね。君、術前カンファレンスでそんなこと言ったっけ? しかしね村中君、あれ程石灰化の著しい髄膜腫は、それ以上肥大化することなど全くといっていいほどないんだ。そもそも、オペする必要があったのかね」
オペを決定し、難易度は中程度だ、と執刀医に自分を指定したのはあなたではないか。口まで出かかった言葉を村中はかろうじて飲み込んだ。
「面倒なことになったら困るのは君だけじゃないんだ。くれぐれも僕や大学に累が及ばないよう
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