術後/草野大悟2
 
だ。何かあったんだ」
 陽子のことを全部話してみよう。
 テレビを消した。
「実はね、沙織。今月、良性髄膜腫のオペをしたんだ。佐藤陽子という五十五歳の患者なんだけどね。術後が、僕がこれまでやってきたオペのどれよりも悪い。それがずっと心にひっかかってるんだ。訴訟をうたれて負けでもしたら、僕の将来はない。僕ももう四十三だからね。助教から講師になり、准教授になって、教授となるにはむしろ遅いくらいだ。だから絶対に、オペにミスがあった、などということになっちゃいけないんだ」
沙織は、村中の長い話がため息とともに終わるまで黙って聞いていた。
「あなたは、オペにミスがあったとは思ってないんでしょう
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