術後/草野大悟2
 

 沙織の指摘はいつも的確だ。村中は素直に頷いた。
「僕は、この前のオペのマイナスを取り返さなくちゃならないんだ。そうでないと教授への道は開けない」
「ふ〜ん、教授への道ねぇ。私は、今のままのあなたが一番好きだけどなぁ」
「僕がずっと助教のままで構わないわけ、君は?」
「そう。私は、あなたが好きなの。助教であろうが教授であろうが、関係ない」
 村中は、思わず沙織を抱きしめた。
 沙織が心配してくれたとおり、最近は、外来診察やオペの後、医局に戻って、シロップをたっぷり入れたコヒーをがぶ飲みすることが多くなっている。それに、待機日以外の晩酌の量も増えた。自分の体重がこの一年の間に、五キ
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