術後/草野大悟2
 
当方の意に添うものではありませんでした」 村中は、笑みを浮かべて太郎を見つめていた。
「コンサルトをお願いした各大学の脳神経外科専門医三人が、当方と異なる見解を示し、それ以外の人物も見当たらない以上、誠に遺憾ながら、本調停の継続は困難と考えます」
 渡辺が調停申立撤回について言及した。
 そのとき、突然、太郎が立ち上がった。
「村中助教。あなたが行った家内の手術、百歩譲って過失がなかったとしても、手術前あんなに元気で日常生活を送り、現代精鋭選抜絵画展で入賞するほどの油絵を描き、今後が期待されていた家内を、要介護度5の障害者にし、彼女の全人生を奪ったこの手術は、果たして成功したと言えるのでし
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