術後/草野大悟2
 
真一郎である。教授選で倉田に敗れ、大学を去った。甲斐の講義を受けたこともある村中は、その気安さもあって甲斐に電話を入れた。
「甲斐先生お世話になってます。宮崎学院大の村中です」
「おお、村中君か。こちらこそいつも患者を回して貰って感謝してるよ。ところで今日はなんだい?」
「ええ、先日そちらに入院をお願いした佐藤陽子という患者の容体が気になったものですから……」
「佐藤って……ああ、左半身とかに拘縮がきているあの女性? そういえば君が執刀したんだっけ?」
「はい、そうです。良性の髄膜腫のオペでした。術後の容体がここまで悪くなった患者は今まで経験したことがありません、それで気になって……」
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