術後/草野大悟2
 
トレッチャーに乗せられた陽子の横で、太郎が村中を睨み付けて訊ねた。
「先生、家内は手術前のように普通の生活ができるようになりますか?」
「僕には、正直、なんとも言えません」
「なんとも言えない? よく平気な顔してそんなことが言えますね。あなたや倉田教授が、失敗する確率は一パーセント、と言うから手術を受けたんだ。それをこんなにして、なんとも言えませんだって!」
「ご主人、まあそう興奮なさらずに。ご主人は力が強そうだから、奥さんを抱きかかえることも簡単でしょう」麻酔医の林が横から口を挟んだ。「いらぬことを言うな」村中は心の中で吐き捨てた。
 太郎の顔が真っ赤になった。両手を握りしめ、今にも林
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