ふたつ 荒れ野/木立 悟
 






塔の影が
曇の下を
菱形にのびてゆく
終わりから
はじまる


地を泳ぐ
鉄の蓋
油脂に包まれ
廻りつづける


球根
毛根
空は夜のなかで
起伏を撫でている
不規則な まばたきの
触覚


曇を掘る爪
赤の地層
雨に近い陽
ひとかけら
虹を纏う背


緑と 別の緑が争いながら
海原を創り 押し出している
戻るものもある それは
色を
川を 分けてゆく


ごつごつとした風が
鉄柵に当たり 砕け散らばる
草の音 水の音
忘れられたものの数より
少ない音


ふたつの波の影が重なり
旋り廻り 渦まきながら
異なるものらを
外なるものらを
引き寄せてゆく























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