日常/……とある蛙
 
集など放って置かれているが、全て途中までしか読んでいない。
そのうちの一冊を手に取ると異様に重く、自分の腕が、いや正確には前腕が突然伸び出して重力に負けて机に垂れ下がった。護謨(ゴム)では無く反発力は無い。だらしなく机に垂れ下がつている。本はまるで机にへばり付いているようだ。
しかし、その有り様はほつ放り出されているだけなのだが。

読むに読めず、書くに書けず。パソコンを立ち上げ、画面越しに他の詩人の詩を読む。眼が溶解してしまつたようだ。次第に薄ぼんやりとした画像しか認識できなくなり、咳き込む。

 花粉症で鼻水が滴り落ちる。
 菊正宗をぐびりと呑む。

 喉の内側から熱い液体が浸みだしてきて、そのまま昏倒。ゆつたりとスローモーションのように天上がぐるぐる回つている。そのうち視野が狭くなり暗転。
 この繰り返しを断ち切ろうと似非詩人になろうとしているのだが。。

 厠へ行こうと目覚め、放尿しながらはっと気づく。
 
 詩を書いた原稿用紙の裏側に浸みだした物がこの日常だったことを。
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