窓の外/竹森
雨、いつも待っている、
雨、いつまでも人を殺せない、
雨、いつか風邪を引いた私の、
雨、手の届かない、ところが常に、痒い、
痒い、痒いんだ、前歯の裏あたりが、前頭葉の祖語が、
優しかった祖母の記憶が、血球の擦れる地点が、
あなたの連ねる詩句のそれぞれが、
それらを隔てている気障な句読点が、
飲み干したばかりのスチール缶コーヒーの裏面が、
雨で掠れた大気が、掠れた文庫本の表紙が、
衛星の引力にざわめく木星の大気圏が、
遺伝子に刻まれた前世の仄かな情熱が、
「雨が止みません。きっと明日も雨です」
「晴れたら肌が焼かれてしまうじゃない」
盲目の少女に微笑む。透明なグラ
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