伽藍の春/atsuchan69
爽やかな朝が座禅を組んでいるのを遠巻きに見て、
賑やかに客が行き交う池のある庭に面した廊下に立っていたおまえは
鼻を垂らし、
昼も夜もなく透明な凍りついた顔で笑っている
やがて厳しい冬が過ぎ、
畳の目から女の声が湧きだすと
身体のない和式の右、
もしくは左の耳が手をあててその声を聞き始め、
報道記者たちもいっせいにマイクを向ける
♪にゃあー、にゃあー
天井に吊るされたいくつもの首が揺れる
庭を歩いている人も思わず足を止めてその声に惹かれた
とつぜん、蓮の葉を浮かべた池の水が噴き出すと
足の生えた錦鯉が幾匹も
白い玉石を敷いた庭に躍り出た
さらに細かな畳の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)