灰色の道/ただのみきや
 
灰色の道の上に
ひとつの疑問が落ちていた
ずいぶん昔 この胸に生まれ
しなやかに若木のように育ち
そして出て行った
いつか答えを見つけるのだと
朝の光が包む白い道を
振り向くこともしないで

いま車に轢かれたように
ぺしゃんこになって死んでいる
疑問にわたしが追いついたのは
答えを見つけたからなのか
見つからなかったからなのか
たぶん疑問を
失くしてしまったからだろう

わたしは膝を折り屈みかけ
想い直して 立ち去った
いまさらどうにもなりはしない
虫歯の神経を抜くようなもの
すぐに馴れてしまうだろう

道はますます狭くなり
あたりは暗くなる一方
何が疑問だったのか
いまはもう憶えていない
ただアスファルトに張り付いた
濡れた花びらのような
若く美しい横顔だけが残像で
ほつれた糸を
弄んでばかり



           《灰色の道:2015年2月28日》







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