3ジグソーみそ汁/吉岡ペペロ
を感じていた。
みそ汁よりもあったかい弁当だった。
妻がつくってくれた弁当をよくここで食べた。
いまは菓子パンだ。
ただ味があって口のなかでもごもご噛んでいるだけだ。
これから仕事だ。
車のなかが好きだなと思った。
人生の記憶のほとんどが車のなかでの出来事のような気がする。
約束する?妻の声が聞こえた。
おう、ぼくはそう答えた。
ぼくは妻にプロポーズしていた。
毎日おまえのみそ汁が飲みたい、それいがいなんにもいらない、みそ汁つくってくれるか?そんなプロポーズだった。
助手席の妻が泣いていた。
ぼくは肩を抱いて、幸せにするからなと言った。
妻の服と妻の肩の骨が揺れていた。
菓子パンを食べている口のなかがそれを真似していた。
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