月命日。/梓ゆい
 
雪が解けた、駒ケ岳の峰。

麓に向かい、流れてゆく水が
悲しみも流してゆく。

不意に通り過ぎた突風が
父からの「がんばれよ。」にも聞こえたようで

南の方角に手を振った。

(生きようとする力は、身体の芯に蓄積されて
見えないはずの父の姿が、今鮮やかに浮かび上がる。)

両手を伸ばす。
懐かしい父に向かって。

私の足はだんだんと
父の方へと向かってゆく。

「お父さん。お父さん。お父さん。」

父の顔が今一度
私に微笑んだ。

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