魔性と化生/ただのみきや
 
結露した窓から
こっちを覗き見て
耳の上の辺りが特にひどいまるで
死に損いの四月の残雪のよう
そう言って笑った
冬の魔性は
死と均衡のとれた美貌を冷たい時間に包み
去り際には何度か振り返る 
すこしだけ自嘲的に

瞳は無垢に巣立ったばかりの雀のように
肌でこっそり盗み見る
それがマナー自分なりの

狂気のために一部屋あてがう理由を問われれば
告白するだろう
凍りついた言葉の裏側を滔々と流れる
夢想の月が概念の枯れ林を道化のように照らす
浸食と混濁の夜
像のないおまえの冷たい素肌に溺れてしまいたい
そう指先を跳ねさせながら

風が樹木をしっかりと抱き寄せる
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