大切にされなくなるときのために/岩下こずえ
 

 一日中、眠りに落ちていた。目が覚めると、身体の疲れはいくらかマシになっていた。しかし、それでも動き出すことはできそうになかった。あらゆるすべてのことが、どうしようもなくつらく思えて、仕方なかった。
 窓の外はまだ暗い。時計の蛍光色の針は早朝を指していた。ということは、もうしばらくすると再び日が昇るわけだ。眠りから覚めはじめていたその意識は、うすらぼんやりした曖昧な状態から少しずつかたちを取り戻し、そして最後に一言、「うんざりだ」と言って、雄一郎になった。
 雄一郎は、まだ布団から出ない。布団のなかで、新しい仕事に行くために家から出なければならない時刻を考える。そこから、洗顔とか、シャワー
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