『風立ちぬ』をめぐって/動坂昇
夜中に銃弾を点検しているマルコ(ポルコ)を見つめる場面と、まったく同じ角度と構図で描かれている。
あるいは、最終場面で、二郎のつくった零戦たちが群れをなして飛びあがり、空に一方向を向いて広がる飛行機の大群のなかに加わるところに注目してもよい。あれはマルコがフィオに語って聞かせる物語のなかに登場する「飛行機乗りの墓場」そのものだ。
しかし重要なのは類似性よりも差異である。その点では、マルコの旧友フェラーリンが、ファシスト当局に追われるマルコを心配して、空軍に戻ってくるよう勧めたあとのせりふが思い出される。「国家とか民族とか、くだらないスポンサーをしょって、飛ぶしかないんだよ」。これに対してマ
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