回想10年/葉leaf
 
初めフィクションを書いていた。かっちりと整えられた複雑で幾何学的な幻想的詩編を書いていた。これは先人の様式をまねたという点もあるが、それ以上に、私は様式や構造に執着することに妙な満足感を抱いていたのだ。危機的な状況にあった私としては、その危機をそのまま叫べばよかったのかもしれないが、私の推進力は内容ではなく作品的完成度へと向かった。内容はさほど問題ではなく、それをいかに書くかの方が、到達するべき地点が高いように思えたし、その高い地点へと向かっていくのは快楽であった。私は人生や生活を嫌っていた。それらは余りにもあからさま過ぎて、詩ではないと思っていた。詩というのは内容で勝負するのではなく、いかに執拗
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