侵入者/たけしいたけ
森の奥のある秘密
僕は古ぼけた写真のような丘陵で
羊達を眺めながらその妄想にかられた
あの森の奥には知られざる野生の生態があり
僕は抵抗するすべもなく焼かれてしまうのではないか
そこにあふれる魔力の熱によって
丘陵の中に歩を進めると
あちこちみだらによく乾いた糞があり
草の匂いとまじる
一歩ふめば小さな虫が飛び出し
時折ガサガサと枯れ草を摩擦するノイズがあり
僕は全くリズムの合わない生物となって
平和な丘をあるく
異質なものの侵入
出来うる限り彼らの邪魔をしないよう
刺激しないようそれでいて毒など浴びせかけられないよう注意を払った
西の空高く二匹の鳥が飛んだ
途中で一匹が急に角度を落とし森の中に消えた
僕はそれでもつまらないことを止められない虫のように
森の秘密へと一歩一歩進んでいった
ふと後ろを振り向くと僕通った道だけがながく麓へと続くブザマな形跡を残していた
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