痰が飛んだ/花形新次
 
喉がいがらっぽかった
痰が絡んでいた
構わずきみとおしゃべりした
きみとのおしゃべりは楽しかった
きみのことが好きだった
瞬間、僕の口から
何かが飛んだ
薄緑の物体が飛んだ
飛んだ先は
目の前のきみだった
きみの頬だった
そして飛んだのは
僕の痰だった
きみは僕の話に笑いながら
ポケットから
ハンカチを取りだした
頬をさりげなく
さっと拭いてしまい
また話続けた

俺、こいつのためなら死ねる

絶対に死ねる

そう思った

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