渡り鳥/ただのみきや
リンゴを木の枝にうまく乗せることができない
その人は寒空に部屋着のまま 油断したのだ
やっと乗せ終えたところを見計らって挨拶すれば
かじかんだ「コンニチワ」と鼻水少々 そそくさと家の中へ
餌なんかやらなくても野鳥観察には事欠かないこの辺りは
鳥に限らず動物も夏には虫も 好き嫌い共々堪らないほど
(リンゴなら何時でも貰ってあげたのに……)
人目がない今がチャンスかと思いつつ 足元に視線を落とせば
そうかこいつかと 合点が行った
オレンジ色の鳥の糞が白い雪の上に幾つも幾つも
この辺りは並木も小学校のグランドの周りも
ワイワイと朱い実をぶ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)