死にたいと言うな 助けてといえ/馬野ミキ
だから酒を飲むのだろう
あるいは狂人に刺されるくらいなら俺が狂人になったほうがいいのではないかと思ったりする
だがそれは逃避だった
俺は自分自身が下品になることによって
世の中の下品から身を守ろうとしたのだ
何もしてないのに通り魔に刺されたり
理不尽な扱いを受けたりする可能性がある世界に生きているという心構えが自分にはないのかも知れませんと俺はカウンセラーに言った
カウンセラーはたまに俺の発言に驚く
そのおどろく顔がかわいい
付き合いたいと思ってしまう
病院の帰り、
まあ誰かに刺されたり階段で突き飛ばされても
そういう可能性はある世界に生きているので致し方無いかな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(27)