不眠症/竹森
廊下を過ぎて行った
赤いスカート
大人になったら
セックスがしたいです
子供に戻れたら
ハグがしたいです
おにぎりが
握りたいです
いつのまに裸に
なっていたのだろうか
糸を張らない
蜘蛛が足元で這いまわっている
さっきまでそれは
私の長い影だったのに
いつのまにすり
換えられていたのだろうか
今だってどうして
頭を垂れているのだっけと
考えてしまえばそれは
すり換えられてしまったからさと
埃の積もった壁掛け時計
の秒針で目が覚め
灯りを点け放したままの自室で
目をパチパチさせながら
机から顔を上げると
睫毛が一本
ひらひらと宙を舞って
ちょうど唾液で沼みたいになった
ルーズリーフの上に落ちて
沈んではいかなくて
いつのまにかすり
換えられていたのは私の方で
いくら布団に
飛び込んでみたところで
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