夜の帳/たけしいたけ
 
どこかの車両から低音が伝わってくる
その音は僕をまだ眠らせない
泥で塗りたくられた夜を
ネズミとなって跳ねる
深緑の池の表面を低く銃弾がはしる

僕らの内臓という内臓から放たれ
夕顔や街路樹、ノライヌ、薬局の看板
それらをかすめた摩擦から
火がつき僕らは燃え上がる
カタカタと骨のなり響くそれは
車両の音を上塗りする

誰か 誰か

誰か?君は井戸の底のような
誰かのいないドコカに住んでいる
私の手帳も燃え上がる
バレンタインと書かれた日付
暗闇のオーロラ
あなたの残酷が木樹の皮を剥ぎ進化させるだろう
僕はその粉末を拾うだけ
灯りのない夜の帳
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