臓器に咲く/ヨルノテガム
 
ではない穴ぼこが漂う
 汗が落ち 汗をぬぐう
 溶けた命やちぎれた物を置き去る
 音なく鳥の群れは水平に空を滑ってゆく
 嘴のない鳥が自身の真ん中に空洞を抱えながら
 空を水平に滑ってゆく
 風の囁きが過ぎる
 風の正体は無残を知り、知らせつづける生きものか

 人ひとり生きる間に
 幾つもの花は枯れ折られ
 捧げられていく
 しかしまた
 一輪の花の周りで
 多くの足跡は途切れている









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